会社概況検索システム「エレサーチ」の特集として、「電子部品商社ランキング2016年版」をまとめた。本稿ではその一部分のみを抜粋して掲載する。「電子部品商社ランキング」は、2012年から続けている国内電子部品商社の売上高ランキングと対前年比の増減率ランキング。
内容としては、弊社で調査した会社概況検索システム「エレサーチ」に採録されている国内電機業界上場・非上場企業約1,750社の中から電子部品商社571社を対象に、専業度が比較的高い404社について売上高をランキング、さらに連年で売上高が判明しているものについては増減率もランキングしたもの。
エレサーチに掲載した本体は、全体でPDF A4版50ページのボリュームとなっている。エレサーチにおいては、仕入先や販売先、拠点などから会社の検索が可能で、各社の概況、業績3カ年分を採録している。
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第1章:上場専業大手のトップ10推移(16年3月期見込みまで) |
最近3年間の上場電子部品・材料専業商社のトップ10の推移は下表の通り。
電子部品というよりは材料商社に近いが、黒田電気が毎年増収を続け、急成長して順位をあげ、13年3月期の7位から、14年3月期2位、そして15年3月期は売上高ランキングトップに躍り出た。さらに2位に入っているマクニカも、13年3月期から、6位、5位、2位と毎年順位をあげてきていた。
しかし16年3月期になると(見込み段階ではあるが)、様相が異なってくる。16年3月期は一転して黒田電気が減速見通しとなっており、第3四半期まで(2015年4〜12月)の集計を終えた時点で16年3月期予想を下方修正、2ケタ減収減益を余儀なくされる見込みで、4位に陥落する。
一方15年3月期に2位だったマクニカは、16年3月期の期初となる2015年4月に上場電子部品商社の富士エレクトロニクスと経営統合することが決まっている。このため16年3月期はマクニカ・富士エレ
ホールディングスという持株会社傘下で一体運営されており、富士エレクトロニクスの売り上げが16年3月期はフルに加わる。16年3月期では売り上げトップに躍り出る見通し。
さらに2016年後半ということになるが、15年3月期時点で3位だったUKCホールディングスと、5位だった加賀電子が2016年10月に経営統合することでも既に合意している。実質経営規模でいうと、この統合会社が2016年中には国内最大規模の電子部品商社となることが確実となっている。
またエレマテックが同じ豊田通商グループだったトムキ(東京都文京区)を2014年に子会社化して同年12月に吸収合併、16年3月期はその寄与もあり、10位から6位にランクアップする予定。
電子部品商社業界は大きな再編のなかで勢力図が目まぐるしく変わる様相となっている。
◇最近3年間の上場電子部品・材料専業商社売上高上位10社
順位 |
2013年 |
2014年 |
2015年 |
1 |
UKCホールディングス |
UKCホールディングス |
黒田電気 |
2 |
丸文 |
黒田電気 |
マクニカ |
3 |
加賀電子 |
丸文 |
UKCホールディングス |
4 |
リョーサン |
加賀電子 |
丸文 |
5 |
菱電商事 |
マクニカ |
加賀電子 |
6 |
マクニカ |
リョーサン |
菱電商事 |
7 |
黒田電気 |
菱電商事 |
エクセル |
8 |
新光商事 |
三信電気 |
リョーサン |
9 |
三信電気 |
トーメンデバイス |
三信電気 |
10 |
トーメンエレクトロニクス |
トーメンエレクトロニクス |
エレマック |
16年3月期の1〜3四半期(14年4月から12月)が終わった時点での、今期通期予想の売上高順ランキングは下表の通り。
◇16年3月期予想における上場電子部品商社売上高トップ10
※16年3月期予想は同年第3四半期終了時点のもの。 (上段金額・百万円、下段増減率・%)
社 名 |
16年3月期予想 ※ |
15年3月期実績(参考) |
売上高 |
経常利益 |
当期利益 |
売上高 |
経常利益 |
当期利益 |
マクニカ・富士エレ
ホールディングス |
397,000 |
10,200 |
7,500 |
− |
− |
− |
− |
− |
− |
− |
− |
− |
UKCホールディングス |
300,000 |
6,300 |
4,200 |
280,672 |
6,233 |
4,037 |
6.9 |
1.1 |
4.0 |
-11.5 |
-13.9 |
-8.2 |
丸文 |
284,000 |
4,500 |
2,550 |
280,320 |
4,066 |
2,071 |
3.8 |
15.8 |
28.1 |
7.6 |
3.1 |
3.1 |
黒田電気 |
280,000 |
7,900 |
3,800 |
326,412 |
10,303 |
6,765 |
-14.2 |
-23.3 |
-43.8 |
13.4 |
13.5 |
16.8 |
加賀電子 |
252,000 |
7,700 |
5,000 |
255,143 |
7,664 |
4,416 |
-1.2 |
0.5 |
13.2 |
-1.1 |
31.1 |
13.9 |
エレマテック |
240,000 |
8,250 |
6,000 |
181,876 |
7,077 |
5,105 |
32.0 |
16.6 |
17.5 |
26.8 |
25.4 |
32.2 |
リョーサン |
235,000 |
5,700 |
3,800 |
233,552 |
5,469 |
3,200 |
0.6 |
4.2 |
18.7 |
-2.0 |
8.3 |
-0.7 |
菱電商事 |
226,300 |
3,570 |
2,000 |
237,877 |
4,505 |
2,891 |
-4.9 |
-20.8 |
-30.8 |
5.8 |
-20.1 |
-18.6 |
三信電気 |
200,000 |
2,000 |
1,300 |
219,091 |
3,117 |
2,003 |
-8.7 |
-35.8 |
-35.1 |
14.0 |
17.3 |
10.9 |
トーメンデバイス |
174,000 |
1,600 |
1,100 |
171,882 |
1,681 |
1,056 |
1.2 |
-4.8 |
4.2 |
-1.6 |
-10.0 |
0.5 |
一方こうした再編とは別な事情になるが、15年3月期にトップ10圏外から急にエクセルがランクインしたものの、16年3月期では再び圏外に落ちている。これは15年3月期中の2014年10月に、販売先だった台湾のタッチパネル大手、勝華科技(ウィンテック)が台中地方法院(地裁)に対して会社更生法の申請および財産の保全手続きを申請したことが要因。
エクセルはウィンテック向けの販売で15年3月期に急増(81.2%の増収)となったが、実際にはこの売り上げの多くが焦げ付きとなってしまい、15年3月期は78億円余の最終欠損転落となった。
そして16年3月期はこの反動もあり3割以上の減収となる見通し。正確に言うと、台湾ウィンテックの会社更生法申請後、同社向けの電子デバイス販売は取り止めているが、ウィンテックの最終販売先だった米アップル社や中国スマートフォン大手の北京小米科技(シャオミ)を最終販売先であるメーカーへの販売が多い構図はそのままのため、一定の売り上げは残っているが、16年3月期には中国スマホ市場の停滞感などの影響を受ける形となっている。
2016年には中国の景気減速を背景に、期末には失速感が強まっている。1〜3月が底だという見方もあるが、円安基調もひと段落しており、市場見通しは不透明である。
しかし2015年については、総じて好景気だったとされ、一般的には倒産事例についても少なかった。それでも中小企業の倒産事例などは多かったが、電子部品商社はメーカーなどと違い、設備投資の必要がないため、借入金に依存するケースがそれほど多くなく、倒産事例は少ないとされる。
しかしそれでも、2015年において電子部品商社の倒産がなかったわけではない。
第2章では注目された商社倒産のなかから上場大手と、規模は小さいが歴史と知名度のあった商社の倒産例を挙げる。
<江守商事>
電子材料など商社の江守商事を中核としていた江守グループホールディングスは、2015年4月30日付で民事再生法を申請した。
会社は民事再生下でスポンサーを得て、事業は存続しているが、行き詰まりが表面化したことに変わりはない。
江守商事を中核とする江守グループホールディングスは、中国取引での失敗が行き詰まりのすべてだった。具体的には、中国子会社において滞留している売掛債権の回収可能性および取引の妥当性に疑義が生じて、15年3月期に一気に巨額債務超過、全体売り上げの大半を占めていた中国販売から撤退を余儀なくされるなど危機的状況に陥り、結局そのまま民事再生となった。
中国子会社、江守商事(中国)貿易における売り上げに疑義が生じたことが原因で、中国子会社が実態のない会社との取引に関与している可能性を指摘され、調査の結果、債権の大部分が結局は回収できないことが判明したというのが中身。
江守グループホールディングスの前身は、1906年創業という老舗で、法人改組は1958年、70年に江守商事に改称、2014年から持株会社制を敷いていた。創業当初は薬種商だったが、染料、工業薬品などの化学品や合成樹脂、電子材料などへ事業を拡大し、その後、システム開発や情報機器などの情報事業にも積極的に展開して拡大を遂げ、2005年4月には東証2部に株式を上場、2006年3月には東証1部に指定替えを果たしていた。
中国で拡大、中国で行き詰まった倒産(民事再生)だった。
<美竹電機>
経営規模では江守商事には遠く及ばず、最後は従業員規模も数人という規模だったが、電子部品専業商社として、業界のなかでの知名度は高く、むしろ美竹電機の倒産は、業界でのインパクトでは江守商事の民事再生申請を上回った。
美竹電機は、2015年9月7日まで仕事をしていたが、8日付の手形決済の資金繰りがつかず、7日までで事業閉鎖、同日夜に弁護士に事後処理を委任した。2016年2月中には破産申請の予定となっている。
1966年設立で、半世紀におよぶ業歴のある電子部品商社だった。コネクタ、スイッチ、リレーなど各種電子部品の販売を行っていた。
取引先に対して美竹電機から送られた文書によると「1990年ごろの不動産バブル崩壊に始まり、その後のITバブル崩壊やリーマンショック不況で借入金が増大、この間不動産バブルのなかで購入した本社営業部のマンション売却や人員削減を進めてきたが、経営改善は進まず、先月から受注が激減して過去に例がないほど厳しい状況に陥った」と行き詰まりの経過を説明している。
<誠電社>
誠電社は、基板実装・電子機器組立などを手がける一方、電子部品商社という位置づけだった。2015年12月4日付で事業閉鎖しており、2016年2月中にやはり破産申請する予定となっている。
1968年創業で、電子部品販売商社であると同時に、電子機器の組立メーカーで、基板実装および鉛フリーハンダ付加工などの受託も手がけている。
取り扱う電子部品は抵抗器、LED、コネクタ、フェライトコア、ヒューズ、コイルなど幅広かった。売上高は年間7億円前後で比較的安定していたが、パチンコ・パチスロ市場向け販売が多く、同市場向け販売は受注の波が大きく、またパチンコ・パチスロ市場そのものの停滞もあり、こうしたことから行き詰まったとみられている。
エレサーチで採録している電子部品商社のうち専業度が比較的高い404社すべての売上高ランキングのトップ20に、増減率算出可能だったものをまとめたものが後表。
売上高については、特に上位においては専業度においてややばらつきがある。トップの兼松は電子関連は売上高のおよそ4割、以下、岡谷鋼機は2〜3割、また日立ハイテクノロジーズは装置など機器が主体でデバイスは2割弱だが、ここでは全体売上高をとらえている。
〜以下文章は省略〜 (エレサーチでは404社のすべてのランキングを掲載)
◇エレサーチ≪商社≫ 2016年売上ランキング(上位20社のみ抜粋) (単位:百万円)
|
会社名 |
決算期 |
売上高 |
増減率 |
製 品 |
1 |
兼松(株) (東京都港区) |
2015年3月期 |
1,117,096 |
0.2 % |
電子・IT、環境・素材、鉄鋼、機械・プラント |
2 |
岡谷鋼機(株) (名古屋市中区) |
2015年2月期 |
816,828 |
9.7 % |
鉄鋼、情報・電機、産業資材、生活産業 |
3 |
(株)日立ハイテクノロジーズ(東京都港区) |
2015年3月期 |
637,497 |
-0.3 % |
先端産業部材、産業・ITシステム |
4 |
日本サムスン(株) (東京都港区) |
2014年12月期 |
418,134 |
11.0 % |
通信関連部品、鉄鋼・非鉄製品、機械設備 |
5 |
黒田電気(株) (東京都品川区) |
2015年3月期 |
326,412 |
13.4 % |
電気材料、半導体電子部品 |
6 |
インテル(株)
(東京都千代田区) |
2014年12月期 |
314,705 |
− |
半導体、サーバ製品 |
7 |
(株)マクニカ※ (横浜市港北区) |
2015年3月期 |
284,673 |
11.2 % |
集積回路・電子デバイス ※15年4月に富士エレクトロニクスと経営統合 |
8 |
(株)UKCホールディングス
(東京都品川区) |
2015年3月期 |
280,672 |
-11.5 % |
半導体、電子部品事業、システム機器事業 |
9 |
丸文(株) (東京都中央区) |
2015年3月期 |
280,320 |
7.6 % |
半導体等デバイス事業、システム事業 |
10 |
田中貴金属販売(株) (東京都千代田区) |
2015年3月期 |
258,598 |
-0.1 % |
電子部品、電子材料、環境機材、貴金属地金 |
11 |
加賀電子(株) (東京都千代田区) |
2015年3月期 |
255,143 |
-1.1 % |
電子部品、情報機器、EMS事業 |
12 |
富士通エレクトロニクス(株)(横浜市港北区) |
2015年3月期 |
244,051 |
15.2 % |
集積回路、一般電子部品、半導体素子 |
13 |
因幡電機産業(株) (大阪市西区) |
2015年3月期 |
239,411 |
2.4 % |
電設資材、産業機器、自社製品 |
14 |
菱電商事(株) (東京都豊島区) |
2015年3月期 |
237,877 |
5.8 % |
半導体・デバイス、FA・環境システム |
15 |
(株)エクセル
(東京都港区) |
2015年3月期 |
235,272 |
81.2 % |
半導体・集積回路等電子部品 ※15年は売上一部を特損で計上 |
16 |
(株)リョーサン (東京都千代田区) |
2015年3月期 |
233,552 |
-2.0 % |
半導体、電子部品、電子機器 |
17 |
江守商事(株) (福井県福井市) |
2015年3月期※ |
224,619 |
7.5 % |
ケミカル、その他機械設備 ※粉飾決算により民事再生に移行 |
18 |
三信電気(株) (東京都港区) |
2015年3月期 |
219,091 |
14.0 % |
電子デバイス |
19 |
エレマテック(株) (東京都港区) |
2015年3月期※ |
181,876 |
26.8 % |
電気材料、電子部品 ※15年は合併寄与有り |
20 |
(株)トーメンデバイス (東京都中央区) |
2015年3月期 |
171,882 |
-1.6 % |
半導体、液晶デバイス、LED、HDD |
注)21位以下および増減率は弊社の会社概況検索システム「エレサーチ」でご覧になれます
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