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   熱狂が壁を崩す
  いよいよ年の瀬となり、2004年を振り返る企画のメディアも増えた。
 印象深い出来事も多々あったが、そのひとつに時ならぬ韓流ブームがある。3(サン)だか、4(ヨン)さまだか知らぬが、どうも理解しがたい過熱ぶりだ。しかしそれこそがまさに流行という気もする。と同時にその背後にある日韓関係については興味深いものも感じる。
 韓国の反日感情は実は相当のものがある。国策としてついこの前までは日本の文化を完全に閉ざしていたほどであり、市民感情も同じようなものだろう。それが劇的に変化が起きたのが日韓共催のワールドカップだろう。今日の韓流ブームは日韓ワールドカップ抜きではありえなかったと思うのは私だけだろうか。韓国の熱狂サポーター、レッドデビルが共催する日本のために日本サッカーを応援したのは革命的な事件だった。あれが日本独自開催だったらどうなっていたかと思う。
 政治的には何も期待していないし、所詮政治家には何も出来ない。
 言葉は悪いが、おばちゃまたちの鬼気迫る(?)パワーが近くて遠い国韓国をさらに近づけた。理屈を超えた熱狂が超えがたい壁を簡単に超えた。
 中国にヨンさまはいないか? とふと考える。
2004年12月23日
   中国人の血
 香港の地元紙が伝えるところによると、広東省東部で橋の通行料徴収をめぐって住民3万人が騒乱、死傷者まで発生したという。10月中に通行料撤廃が決まっていたのに11月になってもまだ徴収が続いてことがトラブルの原因だという。しかし組織的なデモなどによるトラブルではなく、オートバイに乗った女性と職員が口論になって騒ぎが次第に大きくなったという。見たわけではないが、手にとるように想像できる。
 どうも中国では、あるいは中国人は、事を大げさにする傾向がある気がする。
 個人的な体験だが、以前うっかりして中国で空港に忘れ物をしたことがあった。すぐに気がついて空港にタクシーで取りに帰ったのだが、空港前でUターンしたのがよほど不審だったのか、荷物を空港の建物に取りに帰っている間に大変な人だかりになってしまったことがあった。
 タクシーの運転手がこの日本人は荷物を取りに帰っただけだと説明しているのだが、皆がUターンのわけを知りたがり、集まってきたのだ。最後には穏健な私も(?)さすがに「ほっといてくれ」と言いたくなるほどの騒ぎになってしまった。
 あの空港での出来事も、そして前述の住民の騒乱も、そして過日のサッカーアジアカップの反日の動きも、実は思いはそう深いものではなく、どうも中国人の血がみなそうさせたという気がしてならない。
2004年11月23日
   逆指標
 人の気持ちは揺れ動くものだし、意見も変わるものだ。それは承知している。しかしこの人の変節はいかにも多い。
 ついこの前まで、日本の平均株価は1万円割れが見えていると下落予想をしていた高名なアナリストのM氏が、今度は「日本市場は上昇局面に入った」として1万2000円までの回復を言い始めた。この前まではメーカーの在庫増や原油高がその理由で、それはそれで説得力もあったが、今回は米国でトレンドが変わったのが変節の理由のようだ。
 これまでにもM氏はジェットコースターのように上昇予想と下落予想を繰り返しており、別段この局面で予想を変えてきたことにも大きな意味はないと思うが、実はひとつ気になることがある。
 それは市場関係者がひそかに語っていることで「M氏が予想すると市場はその逆に動く」というものだ。これまで氏が上昇すると予想すると市場は逆に下落し始め、下落を予想すると上がり始めたというのだ。
 今度ばかりは氏の予想も当たってほしいのだが・・・・。
2004年11月8日
   上を向いて歩こう
 景気回復を牽引していたデジタルカメラ販売に失速感が出てきた。伴って、既報のように京セラは自社ブランドの一部撤退など大幅縮小を決め、キヤノン、ペンタックスなどに続きオリンパスと富士写真フイルムも出荷計画を下方修正した。もうひとつの牽引役だった携帯電話もカメラ付需要の一巡で停滞感が出ており、急速な普及が期待された中国でも今や在庫が4000万台にも積み上がっているといわれる。液晶も半導体も遠からず供給過剰となる公算が強い。
 一方社会情勢に目を転じても、国内では新潟の地震が不安感を募らせ、海外でも引き続き中東情勢は不安定でテロ懸念も根強い。
 どうも見通しは暗い。よくもここまで重なると思えるほど悪材料ばかりだ。しかしものは考えようである。市場でも「材料出尽くし」という考え方があるが、底まで辿りつけばあとは昇るしかない。よく「底なし沼」と言われるが、底がないものなどこの世に存在しない。必ず底はある。たとえそれがどんなに深くとも、必ず底はある。ただ気をつけなくてはならないのは、どこが底かと下ばかり見ていると足元はますます緩むことだ。這い上がるときには、人は上を見るものだ。
 今こそ上を向いて歩こう。
2004年10月30日
   恐竜とねずみ
 プロ野球の新球団設立に、ライブドアに続き楽天が名乗りをあげている。ネット企業が相次いで手をあげていることに時代の流れを感じるという人も多いが、確かにかつては映画配給会社や新聞が球団を持ったことを考えると、それはそれで興味深い。
 しかし私だけが感じるのだろうか、楽天は札束を抱えて後から列に横入りしている印象を拭えない。すべて信じはしないが、読売に頼まれて腰をあげたとかいう噂も(真偽はともかく)ありそうな話だと思えてしまうところがあるのが不思議だ。
 楽天とライブドアは体質的にもどうも少し違う気がする。楽天が盛んに経済界の有力者をブレーンとしてあげているところもどうも既にベンチャーの域は出ているのではないか。事実、サイトビューの数字などみると両社には格段の開きがある。
 某紙が「恐竜とねずみぐらい違う」と書いたが、確かにそうだ。しかしその報道を見て思った。なぜ大きさの違いの比喩が「恐竜とねずみ」なのだろうか? 普通は「象とあり」とかではないか? 
 恐竜は絶滅したが、ねずみはゴキブリとともに「絶滅しない生物」と言われる。考えすぎか。
2004年10月9日
   見つめよう、そして考えよう
 プロ野球のストが決まった。事態に急展開がなければ、18日、19日の試合はない。旧弊から抜けられない組織側は目にあまり、古田選手会長の苦闘はいかばかりかと思う。
 ストが決まった交渉前日の16日、古田は選手としてもゲームを決めるホームランを打った。そして試合後のインタビューでは、交渉のことでもなく自らのホームランのことでもなく、勝利投手となったチームの投手について「3年連続で10勝になってよかった」と気配りをみせた。
 ストの是非をめぐる議論はあるだろうが、そんなことはどうでもいい。渦中にあって、交渉のさなかにあって、自分は試合を決めるホームランを打って、そこでこの発言である。
 誰かに爪の垢でものませたい。と言う前にまず自分がのむべきか。  猛暑もようやく薄らぎ、オリンピックの熱狂も終わった。季節はいやおうなく移るタイミングだ。変化は間もなく来るだろう。ただどちらに移るかは分からない。空をじっと見て考えるしかないが、あいにく秋の空は変わりやすい。
2004年9月18日
   秋の空は移りゆく
 9月第2週の株式市場は月曜日に急上昇した後、週末にその分をそのまま戻すという結局行って来いの相場となり「方向感の見えにくいレンジ相場」という現状の括り方をそのまま示す様相となった。
 後から理由をつけて何となく納得する分には、月曜日は法人企業投資の設備投資拡大を材料に伸長、金曜日はGDPの下方修正から下落、ということになっている。週末の下げは確かにそうかもしれないと思うが、月曜日の上昇は果たして本当にそうだったのか、とも思う。というのは、法人投資の上昇は朝から分かっていたが、月曜の相場上昇はむしろ午後になってからだったからだ。じわりと後から反応してきたのかもしれないが、どうも違う気もする。むしろ月曜は少し上がるタイミングだった気もするし、そう考えると週末の下落もそろそろ戻すタイミングになっていたとも楽観できる。
 いずれにせよ、景気見通しへの強気と弱気を織り交ぜながら相場は進む。そしてエネルギーを徐々にためながら、どこかでどちらかに突き抜けるのだろう。テクニカル的にも三角保ち合いというチャートはある。今の膠着状態はその序章とも思える。嵐の前の静けさといえばさらに分かりやすいか。
 猛暑もようやく薄らぎ、オリンピックの熱狂も終わった。季節はいやおうなく移るタイミングだ。変化は間もなく来るだろう。ただどちらに移るかは分からない。空をじっと見て考えるしかないが、あいにく秋の空は変わりやすい。
2004年9月13日
   愛していると言ってくれ
 時ならぬ韓国ブームである。言うまでもなく「冬のソナタ」が火付け役だが、こう言っては何だかペ・ヨンジュンがそれほどカッコいいとは思わない(チェ・ジウはきれいだが・・)。しかしあのヨンさまの笑顔と冬ソナの純愛には胸を焦がしている女性も多いのだそうだ。
 韓国ブームはヨンさま人気にとどまらず、韓国料理や韓国旅行はもとより、韓国人男性と結婚を希望する女性まで増えているのだという。そこまで聞くと呆れてしまうが、こんなただならぬ韓国ブームを当の韓国の人たちはどう受け止めているのだろうか・・。
 韓国の反日感情は相当根強い。日韓ワールドカップ共催でその距離は飛躍的に縮められたが、親日より反日の方が多い事実は変わらないだろう。しかしそんなことは「ヨンさま命」のご婦人方にはお構いなしである。
 多くの韓国人は腹の底で笑っているかもしれない。しかし構わないのではないか。「韓国大好き」とノー天気に叫ぶ人が増えることで、韓国でも反日感情が和らぐかもしれない。
 誰でも自分を愛してくれる人には気を許すものだ。
  
2004年9月6日
   あきらめない人たち
 女子マラソンの野口みずき選手の快走には感銘を受けた人も少なくなかったと思う。高橋尚子に続くこの種目での金メダルとなった。高橋には天才の血が流れているのを感じたが、野口には不屈の気持ちがあったような印象を受けた。
 一方東京三菱との統合を決めているUFJに対して、三井住友が今度は対等合併案を提案した。これで流れが大きく変わるとは思わないが、そこまでやるか・・と感じた人も多かっただろう。また近鉄買収を提案したライブドアの堀江社長が今度は新球団の開設案を打ち出している。近鉄がらみでは、近鉄の株主が合併無効の訴訟も起こしている。中村修二氏も日亜化学に対してLED訴訟を続けている。主張はさまざまだが、納得できないことにはとことん食らいついていく点では皆、一致している。
 「長いものには巻かれろ」的な保守的な感覚が少しずつ崩れている。あきらめない、最後まで自分の信念を押し通す、そんな人が増えているようだ。
 奇しくも「俺を誰だと思っているんだ?」と取り囲む記者に言い放った権力の象徴、ジャイアンツの渡辺オーナーは過日退任した。あの場所に居合わせた記者には「渡辺さんでしょ」と言ってほしかった。
 あきらめない人たちが金メダルをとる時代になってほしい。   
2004年8月28日
   がんばれ日本
 オリンピックでの日本選手の活躍が続く。これまではここ一番での精神的な弱さが指摘されていたのだが、今回のアテネオリンピックでのメダルラッシュは鮮やかとしか言いようがない。特に金メダルの獲得が多い点は特徴かもしれない。この勢いが景気回復にそのままつながれば、とつい期待してしまう。
 こう書くと「スポーツと景気や株価は別な問題」と批判されそうだが、そうだろうか?
 高度経済成長の入口で開かれた東京オリンピックとそこでの女子バレーなどの活躍、あるいは戦後直後の日本復興時の力道山やボクシングチャンピオンの白井義男の活躍(無論、この辺はリアルタイムでは知らないが・・念のため)、こうしたスポーツの出来事と景気や株価は無関係だろうか? そうは思わない。景気上昇の入口では、それを象徴するようなスポーツイベントやヒーローが必ず登場する。
 アテネオリンピックのテレビ中継は連日大変な視聴率だと聞く。どれだけの目に見えぬポジティブな感覚が日本中を覆っているかと思うと、その影響は図り知れない気がする。シンクタンクの経済押し上げ効果などどうでもいい。人気に便乗しようとする政治家のコメントもどうでもいい。深夜のテレビ中継で「よし」と大声で叫ぶひとりひとりの熱い思いが、これからの日本の景気回復を牽引するのだ。
  
2004年8月21日
   大声の人には注意しよう
 足元の業績は絶好調だが、日本の株式市場は低迷が続いている。企業の関係者に話を聞くと「こんなに業績はいいのに、さっぱり理解できない」という温度差が続いていたが、ここにきて急に、原油の高騰、米国雇用統計の低下、日本4〜6月期GDPの不振と相次いで経済環境やマクロ指標でも不安な材料が出てきた。
 やはり株式市況は景気の先行指数という思いを新たにしたが、そんななかで10日ほど前から新興市場では底打ち感が出ている。なかでも個人投資家に人気の高い銘柄は、先週末の平均株価急落場面でも動じない強さを見せた。常識的に考えれば、原油急騰やGDPの悪化は上昇基調に水を差すと考えられるが、逆にこれで悪材料は出尽くしたと考える市場関係者もいる。見方はさまざまであるが、ともあれ新興市場の動向に当面は注目したい。
 さらに言えば、原油価格は「上昇材料以上に投機的要素があり既にバブル」という指摘があり、遠からず急落を予想する声がある。また週末の日本のGDPも設備投資の推計変更による誤差があり「9月には上方修正される」と言われる。
 いつでも指標には2つの見方がある。それは2種類の人間がいるからだ。強気派(ブル)と弱気派(ベア)である。あるいは素直に「買い」から入る人と、「売り」から入る人間と言ってもよい。大切なのはひとりひとりが冷静に判断することだが、ひとつだけ注意しなくてはならないことは、いつでも「ベア」と「売り」の人間は少し声が大きいということだ。
2004年8月16日
   大ブーイングのなかで
 サッカーアジアカップでは多くの新しい発見があった。
 そのひとつは日本選手のたくましさである。決勝戦の大ブーイングのなかでの試合運びもそうだが、準々決勝だったかのPK戦の逆転劇は特筆に価する。PKで0−2という後のない状況から逆転した結果が、ではなく、その状況でも諦めなかった気持ちの強さが、である。GK川口の闘志もだが、0−2のところで審判にグラウンド状態のクレームをつけていたキャプテン宮本の冷静さと不屈の気持ちには学ぶべき要素があったように思う。
 もうひとつの発見は、日本人は実はこんなにも中国人に嫌われていたのか、という発見である。このことについては中国欄のコラムで別途書く予定だが、ここではそのことよりも「集団心理」ということを書き留めておきたい。反日のその思いの深さとは別に、明らかに集団心理があそこでは働いていたように思う。日ごろからの色々な思いがサッカー日本代表へのブーイングに集約されてしまったようだ。そこには集団心理による増幅があったことは否定できない。
 さて、先週末には米国で予想外の雇用統計の悪化が伝わった。事前予想の数字の信憑性を疑問視する声もあるが、ともあれ市場心理が一気に冷え込むのは目に見えている。集団心理の理論がここでも働いてしまうかもしれない。
 しかし総弱気になったところがセリングクライマックスということもある。
 今週は宮本の冷静さと、川口の闘志を秘めて、市場を見つめてみようか。
2004年8月9日
   いやな奴ほど出世する
 プロ野球のジャイアンツの渡辺オーナーが、近鉄合併や2リーグ制問題について話し合いたいという古田選手会長に対して「選手の分際で何を言う」と突き放したそうだ。
 経営の事情というのも確かにあるだろう。しかし「選手の分際で」という見下したようなその言い方は、何とも「いやな感じ」である。渡辺という人の人間性を見た気がした。100歩譲って経営者としての立場というものがあったとしても、それを口に出してはいけないだろう。
 時折経営者のこういう発言はある。かつて富士通の秋草前社長は、業績悪化を問いただされて「社員が悪い」と言ったし、任天堂の山内前社長は「任天堂は俺の会社だ」と言い放った。まあ組織も大きくなると威張って生きていくのが常となるのかもしれないが、関係ない立場でも聞いていていい気はしない。個人的な思いを言えば、知らぬ仲ではない中小企業の社長さんが「価格競争が厳しくて大変ですよ。全然儲かりません」と笑いながらこぼしているその笑顔と比べると、やはり落差を感じざるをえない。
 しかしそう考えると、どうもいやな奴ほど成功して強い立場になっている気もする。と書くと「自分は性格がいいので成功しないのだ」と変に納得する人もいるだろうか・・。
 念のため、自分のことを書いているのではない。
2004年8月2日
   勝利の方程式って何?
 短観で買ってソニーの四半期決算で売るのが「勝利の方程式」だったそうだ。日銀短観でいい数字が出て株価は上がるが、ソニーの決算が悪く、そこでまた落ちるだろうというのが市場の読みだった。ところが日銀短観は予想通りよかったが、株価の方が全然上がらなかったため、この勝利の方程式はもろくも崩れた。
 そうこう言っているうちに、ソニーの四半期決算が間もなく発表されてしまう。前期末のアナリスト説明会では、会社側は「第1四半期は季節要因もあり欠損もありうる」と予防線を張っていたが、果たして市場でどこまでそれが浸透しているだろうか。これで逆によければ、それこそ「ソニーサプライズ」だが、予想通り(?)悪いと、またぞろ「ソニーショック」になりかねない。
 しかしものは考えようで、もともと「勝利の方程式」は崩れていたのだ。今度は逆をいくかもしれない。短観で売ってソニーの決算で買っておけばよかった、などと後になって言うことになると痛快なのだが・・。
 そういえばプロ野球ではあれだけのスター選手を揃えたジャイアンツがぱっとしない。野球通に言わせると「抑え投手が不在でなかなか勝利の方程式が確立されないのが要因」なんだそうだ。
 ここでも勝利の方程式が機能しない構図があるようだ。しかし実は私ははなから疑っている。勝利の方程式などはじめからありはしないのではないのか、と。
2004年7月25日
   ジダンにはなれないが
 サッカーの欧州選手権はギリシャの優勝という思いがけない結果に終わった。特に目立つ選手がいるわけでもなかったが、フランス、イタリア、イングランド、ポルトガルなどスター選手揃いの強豪国を抑えての優勝は意外だった。また日本代表もこのところ欧州強豪相手に勝利するなど健闘が光るが、こう言っては何だが、中田が怪我で代表から外れてからの方が強くなった気がする。クラブチームでもあのスター軍団レアルは必ずしも戦績は芳しくない。野球も同様であり、各チームの4番バッターばかり集めているジャイアンツはなかなか首位独走とはいかない。チームとしての強さということを考えるとき、個の強さの集合だけではない何かがそこにはあるのかもしれない。
 ビジネスの世界でも企業体質ということがよく言われる。個の力が全体の力となる構図はスポーツの世界と同様だろうが、個の力が生きる企業体質があれば、逆に個の力をスポイルする企業体質もある。ベンチャー企業の躍動は前者の好例であり、俗に言うお役所体質や三菱ふそうの隠ぺい体質などは後者の例だろう。
 できうるならば、やはり個の力が生かされる組織に身を置きたいものだ。ジダンにはなれないが、オリンピック代表の今野ぐらいの働きはできる気がする。ちょっとマニアック過ぎて一部の人にしか理解できないだろうが・・。
2004年7月18日
   選挙も猛暑も織り込み済み?
 連日猛暑が続くが、9日は群馬で最高気温が37.5度に達した。37.5度といえば体温さえ超えているわけで、普通ではない。伴ってエアコンやビールの売れ行きも好調で、猛暑は景気をある程度押し上げそうだ。政府はなかなか有効な景気刺激策をとらないが、選挙前に猛暑を呼び込むあたりはさすがである。曽我ひとみさんの家族との再会劇といい、選挙前にタイミングよく演出する。いかにもショーアップの上手な小泉さんであるとひどく感心する。
 さて11日は参院選である。今週は自民苦戦が伝わり、政局流動化への懸念が市場相場に少なからず影響を与えた。この原稿執筆時点で選挙結果は不明だが、市場では既に自民が改選議席を上回らないところまでは織り込んだと言われる。
 しかしこの「織り込みずみ」というのがいかにも曲者(くせもの)である。過日はFOMCと日銀の短観を無事通過したが、市場はそれまでに既にこの結果を「織り込んで」いたようで、ほとんどまったく反応しなかった。好調な企業業績が示すように景気は上向いているが、これもここまでの景気回復は既に市場で「織り込んでいた」そうである。昨今の停滞はむしろ半年後の失速を「織り込み始めた」のだそうで、特にハイテク市場にはその傾向が強い。いったいどこまで先を織り込み、どこから先がサプライズなのか、その境界線はひどく曖昧だ。
 ただひとつはっきりと言えることは、この猛暑まではまだ市場に織り込まれていないという点だ。
 いかに厚顔なアナリストも今年は猛暑を予測していたとまでは言うまい。そう思えば、暑さもまた心地よい。
2004年7月10日
   ライブドアと賢者の石
 ライブドアの近鉄買収提案は社会的にも大きな話題となった。プロ野球界の抱える問題が浮き彫りになったことが騒動を大きくした感もあるが、ここではそれは置く。
 興味深かったのは投資家の心理である。事情を知らないマスメディアは「ライブドアは近鉄買収が話題となり株価もストップ高となった」と会見日には報じたが、これは正確ではない。同社は株式分割で既にストップ高比例配分が続いている状態だったわけで、むしろ会見を受けた6月30日は場中で寄り付くなど失速感が顕著になっている。案の定7月2日にはついに前日終値を下回った。当日の全体市況が大幅安だった背景もあり、また1000円到達が節目になった要素もあり一概には論じられないが、明らかにこれまでの分割時とは株価の動きは異なる。少なくとも「近鉄買収」は同社にとって短期的な追い風にはならなかった。
 この辺の動きには投資家心理のアヤが見てとれる。おそらくは未知なることへの不安感が重石(おもし)になっているのだろう。買収の可能性はともかく、買収しようという心理は投資家にとっては「よくわかる」ことではない。「なぜ?」という思いの方が強いだろう。経験則からメリットが確実視される場合には評価もたやすいが、前例の少ないダイナミックな動きには多くの人は腰が引ける。ソフトバンクの株価の動きなどもその好例だろう。多くの人が赤字球団を買収しようという会社側の真意を図りかねて及び腰になっているに違いない。当然だろう。親株だけでも利益を確保しておきたいという思いは理解できる。
 しかしあえて逆説的な言い方をすれば、万人にその行動が支持されたときには、ベンチャーの成長は止まる。
 得体の知れない世界に踏み出す者だけが「賢者の石」を手にできるのだ。少しハリーポッターの見過ぎかもしれないが・・。
2004年7月3日
   受験したがらない受験生
 FOMCと日銀の短観までは動きづらい、というのが市場の定説になっている。
 それはそれで事実だろうが、しかしそんな市場の雰囲気に疑問も感じる。FOMCでの利率の引き上げは間違いないだろうし、短観もほぼよさそうだということで既に織り込まれているのではなかったのか。無論、想像以上の引き上げとなることや、短観が事前予測を超えた結果になるケースもありうるだろうが、それはそのときに反動的な動きとなって出てくるべきことではないのか? 多分0.25%だろうけど、もし0.5%だったり、引き上げが今後も継続的に行われることが確認されたらそれは影響があるかもしれない。しかしそれを懸念して今から動けないというのは、失恋を怖れて恋をしない少女のようだ。あるいは不合格を怖れて受験しない受験生のようだ。
 さらに言えば、短観が終わったら、今度は参議院選挙であり、それが終わったら次には第1四半期の決算も始まる。理屈をつければ、いつだってそんなのは出てくるのだ。先行きなど不透明に決まっている。明日のことなど誰にもわからない。先が見えないからこそ、株価は動き、企業はその読みの違いで優劣が出てくるのだ。
 今週はいよいよFOMCと短観発表。当然だが、試験を受けなかった受験生には合格通知は来ない。
2004年6月28日
   出るくいは打たれる
 ヤフーの顧客情報流出がまた明るみに出た。ソフトバンクは個人投資家の多くが投資対象としていることから、先週末の平均株価の下落には、このニュースが少なからず悪影響を与えたという声が強い。このところ顧客情報流出などのニュースが多く「またか」という思いと「情報管理はどうなっているんだ」という思いも素直にあるが、どうも釈然としないものも感じる。
 というのは、そもそもこのニュースは、ソフトバンク側が「遺憾ながら」と発表したものではなく、捜査当局からのリークのような形で一部マスコミで先行して報じられたものだからだ。真相はわからない。しかしソフトバンク側は当初「事実誤認」とコメント、その後「調査中」とコメントしているようだ。ソフトバンクがどこまで現実に掌握できているのかも問題かもしれぬが、仮に報道がすべて事実だとしても、捜査中の内容が一部の報道機関から先行して報じられる構図には違和感を覚える。
 最近では通販のジャパネットたかたでも同じようなことがあり社長が会見で陳謝、さらにいえば18日には松下電器でも「ハイホー」でアドレス流出の発表があったが、今回の話はこうしたニュースと同質でありながら異質のものを感じる。
 こういうニュースに触れると、そのニュースのバリューそのものよりも、その背後に潜むものの方に興味を感じてしまうのは、世のご婦人がワイドショーを見るのと同じ心理か・・。
 ともあれソフトバンクは大手新聞社に少なくとも愛されてはいないようだ。しかしふと思うが、こういう問題は時が解決するのだろうか? 違う言い方をすれば、ソフトバンクがもし本当に日本の通信市場を完全に牛耳ったら、大手新聞社はこぞって提灯記事を書くのだろうか。
 そんな日が来たら、単純に面白いのだが・・。
2004年6月21日
   チキンハート
 「中国の建機市場は調整期に入った」という声がある。つい先日テレビで見たが、中国では日本製のショベルカーの需要が根強く、これを借金して購入して建築業者にリースをして儲けるというビジネスが大流行になっているそうだ。それで大金持ちになっている者も少なくないと報じていた。
 確かに中国に行くと誰もが気づくのは建築現場の多さだ。ありとあらゆるところでビルが建設され、道路が掘り返されている。その恩恵を直接受けているのが建機メーカーなわけで、さしずめそれに群がっているのが上記のにわか金持ちということになるのだが、どうやら当の建設機械メーカーは既に生産増に二の足を踏み始めているということらしい。業界が違うので正確なところはわからぬが、なにやら聞いたような話だ。
 彼らの脳裏にこびりついているのは、増産計画を鵜呑みにしてしまい大量在庫を抱えてしまった数年前の携帯電話向け部品メーカーのケースかもしれない。しかし液晶投資に及び腰で今やすっかり韓国勢に抜かれてしまった国内液晶メーカーの例もある。いつの世もリスクとチャンスは裏返しである。そして間違いないことは、リスクのないところではリターンも小さいということだ。
2004年6月9日
   戻ってきてくれ
  各社決算は概ね好調である。景気も上向きだが、やはり数年来手がけてきた人員削減など合理化効果も大きい。そうしたなかで需要が急に上がってきたので、勢い契約社員や請負業務がこのところ増加しているようである。EMSを手がけているところの活況もそんなところに起因する。
 そんななかで面白い現象が起きている。契約の問題からか、指示系統が複雑になっているのだ。ラインに問題が発生しても、直接指示を出せずに、契約元の会社を経由して指示を出すというロスが平気でまかり通っている。契約元から正規の指示があるまで、ラインは誤作動を続けたままなのだ。そうしないと契約上のトラブルにつながるのだという。
 以前に中国工場に視察に行ったとき、現地の日本人責任者が「中国人の管理者は自分が責任を負いたくないので、短くなった鉛筆一本捨てるのも許可を得てくる。仕事の効率がはなはだ悪い」とこぼしていたが、まさか国内工場でそんなことが起きるとは夢にも思わなかった。
 「何やってんだ」と先輩の技術工が後輩を怒鳴りながら手取り足取り技術を教える。それが企業の成長を支える原風景だと思っていたが、今や変わってきたようだ。
 言うまでもないが、これはおかしい。
 過日、離婚した奥さんに「戻ってきてくれ」とテレビを通じて訴えていた役者がいたが、笑えない。あれと同じことがこの国の名だたるメーカーでは平気で起きている。戻ってきてほしいのは出て行った奥さんではなく、正常な感覚だ。
2004年6月1日
   疑心暗鬼
 21日には決算発表がピークを迎えた。同時に決算説明会も連日のように開かれている。前期業績については、四半期の内容や修正が出ているケースもありほとんど想像つくが、今期予想は「蓋を開けてみないと」というところはある。さてそうしたなかで、過日出席した電子部品メーカーの決算説明会で少し気になる発言があった。
 それは同社社長が語ったもので「今年1月に光通信関連部品のニーズが4月から半減しそうだと業界内で言われ警戒していたが、2月にはメーカーサイドから今まで通りと言われほっとした」というもの。
 その業界内の噂のソースは不明だが、気になったことのひとつは、そうした漠然とした不透明感が業界にはまだまだ蔓延しているのだという事実。そしてもうひとつは、その話の続きで語られたことだったのだが「だから今期予想といっても、正直言って先が読めない」というもの。
 なるほど、という気もするが、ふと思った。
 提出する方が「先が読めない」と言っている今期予想にどれほどの信頼が置けるのだろうか? その大幅増収増益予想にどれほどの根拠があるのだろうか? 
 どうも最近疑い深くなってしまったようだ。
2004年5月21日
   明日は風まかせ
  株式評論家の2氏が先に出版、異なる議論を展開している。
 K氏は「2005年に平均株価は2万円をつけてその後暴落するので、株はあと2年でやめなさい」と述べており、かたやH氏は「10年以内に平均株価は7万6000円になる」と説く。H氏によれば「過去に何度か空前の証券ブームを経験したが、今、同じような空気をひしひしと感じる」のだそうである。正直言ってどちらも苦笑を禁じえないが、当たらないとは断言できない。
 しかし個人的にはむしろ、そうした破天荒な意見が色々な形で出ていることの方に心地よさを覚える。いつの世にも色々なことを言う人はいる。逆に言えば、それは社会が健全な証拠だとも思う。バブルのときのように、皆が浮かれているときが実は一番危ない。
 景気は本当に底を打っているのか、株価は今の調整局面を越えてさらに上にいくのか、為替は円安にこれから向かうのか、専門家と称する人がなぜかがばらばらなことを言う。しかしそれがある意味では本当の姿なのだ。
 明日のことは多少の知識があればわかることはある。しかし半年先のことなどわかるはずがない。だから読者諸兄はそれが外れても揶揄するのはやめよう。そして評論家はたとえぴたりと当たっても自慢げに語るのはやめてほしい。偶然なのだから。
 まあどちらも無理だろうが・・・。
2004年5月15日
   需要はつくられるもの
 ソフトバンクがいよいよ光ファイバ接続事業を始めそうだ。当サイトでも何回か報じてきたが、あとはタイミングだけの問題だろう。ADSLとの棲み分けをどうするのか? ADSLで獲得した顧客をどう移行させていくか、正念場となりそうだ。光ファイバ接続では有線ブロードバンドネットワークスも先に低価格接続を発表、同社株価も上昇しているが、その辺の影響も注目される。
 光ファイバ接続でいつも話題になるのは、果たして光ファイバの大容量が本当に必要かという議論であり、その議論の論拠となっているのは、それを必要とするコンテンツがまだ整っていないという環境にある。簡単に言えば「光ファイバは確かにタクシーのように便利だろうが、近所に行くのには徒歩で十分だ」という比喩だ。
 ちょっと聞くとこれは正論のようだが、これは商売人の発想ではない。いつでもそうだが、すべての製品に初めからニーズがあったわけではない。パソコンを考えればわかる。我々はパソコンのネット情報に囲まれて生きているが、パソコンがないときにパソコンの必要性を感じたことがあっただろうか? 使ってみて始めてその価値を知り、その後から使う環境が整っていったのである。
 光ファイバも同様と考える。「100メガなどあっても仕方がない」と言っているのは「パソコンなど必要ない」「携帯電話にカメラ付などいらない」と言っているのと同じレベルだ。
2004年5月10日
   のようなもの、ではなく
 GW(ゴールデンウィーク)ということもあって、行楽地の情報がメディアでも多くなっている。
 バブル期に安易な発想で登場したものを含めて、多くのテーマパークが既に廃園に追い込まれている一方、圧倒的な強さを誇るのがやはり東京ディズニーランドだ。ディズニーリゾートの勝利の方程式について改めてここで論じるつもりはないが、ディズニーランド開園から数年後には既にディズニーシーの構想があったという先見性と計画性は、やはりさすがだと思う。
 それは長期ビジョンとそれを支える資金力があってこそなのだだが、資金力がなくても発想の豊かさで生き抜いているところもある。
 北海道は旭川の旭山動物園だ。極北の地にあって、入場者数がここ数年うなぎのぼりとなっているその秘訣は、本来の動物の姿をありのままに見せるというコンセプトにある。自然界のなかで上空を綱渡りをして遊ぶオランウータンや水中を泳ぐペンギンの姿は、ショーではなく本来の彼らの生態系をそのまま見せているだけなのだ。しかしそうした動物たちの姿は見る人々に新鮮な驚きを与えている。旭山動物園は、自然界の姿や動物の本来の能力を引き出すことで、ほかにはないオリジナリティを持ったといえる。
 「オランダの街並みを再現」したハウステンボスで得られるのは「オランダのような雰囲気」であり、多くの遊園地がやってきたことは「ディズニーランドのような雰囲気づくり」に過ぎなかった。しかしハウステンボスは所詮オランダにはなれない。地方のテーマパークはどう転んでもディズニーランドには及ばない。
 自分たちだけにできることを探したい。
2004年5月2日
   なんとかなる
 多少大雑把な括り方だが、製品化にいたる生産プロセスには4つの過程がある。「開発・試作」「生産」「量産試作」「量産」である。カスタム品などではこの区分が曖昧なものもあるが、コンシューマ機器などはこの過程ごとに拠点が分かれているケースも多い。いや、多かった。すなわち開発を国内の研究所で行い、生産はまず国内工場、それが売れてくると量産のためのラインの見直しを国内で再び行い、中国などで大量生産する、というのがひとつのパターンだった。
 数年前に中国の工場で現地責任者(日本人)と話をしたとき「初めは量産拠点としてこの中国工場を立ち上げたが、今では量産試作もここで行う。これでパイロットプラントや小ロット品まで日本でやるようになったら日本の雇用が心配だ。開発まで中国でやるようになったら日本が心配だ」と語っていたのがずっと印象に残っていた。
 あれから数年たったが、大手電機メーカーは中国の優秀な技術者を確保するため、相次いで中国に開発拠点を設けている。もう中国工場では、量産はもとより、製品化の初期の段階から担うケースが珍しくなくなった。件の現地責任者の「日本はどうなる?」というところまでついにきている。
 しかし日本はどうもなっていない。景気回復への予兆さえある。何とかなるものなのだ。無論各企業が必死でどうにかしているのだろうが・・。
2004年4月22日
   傷は浅いぞ、しっかりしろ
 今月15日に株価の売買高はついに28億6514万株にまで膨らみ、バブル期の記録さえも抜き、1営業日の売買高としては歴代1位になった。週刊誌でも最近はさかんに株式投資への記事が目立つ。その推奨銘柄が「G銘柄」「P銘柄」など誌名をとって呼ばれてもいるようだ。売買高が嵩んでいるのはデイトレーダーの増加という背景があるためで、実際のところはまだまだ到底バブル期の水準には遠いと思うが、一般紙が株の特集を組み出したのには何かの予兆を感じる。
 これまでにも、いくたびも「もうそろそろ」と言われながら腰折れが続いた。結局のところ今までの局面では、バブルの崩壊で受けた傷の大きさを我々は思い知るだけだった。株の関係者は極端にまだ臆病だ。皆チキンハートでさっと手を引きたがるので、なかなか上昇気運に乗れない。逆に言えば、だからこそ痛みを知らぬ人々の参加が株式市場の活性化には必要だという気がする。その意味でも、普通の週刊誌が芸能スキャンダルやグラビアの延長で株式市場を採り上げることは望ましいことだ。
 いつの世も無垢な心の人々が世を救うのだ。我々の傷は確かに深い。しかしせめて、無垢なる人々にその傷口を見せるのはやめよう。明日を見ている人に、臆病を植え付けてはいけない。
2004年4月18日
   目の前の一杯
  野球評論家の豊田泰光氏が新聞に「その一杯をがまんできるかどうかが真のプロかどうかの境目」というような主旨のことを書いていた。  
 サッカー日本代表の数人が規則に違反して飲酒のために外出したことを例にとってのものだが、含蓄ある言葉だ。たかが酒、たかが外出、という議論もあるだろうが、そういうことではない。目の前にあるこの一杯を我慢すべきところで我慢する人と、飲んでしまう人とでは、どこかで決定的な差がついていくのだ。豊田氏はそういうことを言っているのだと私は読んだ。
 特に興味深かったのは、伝説のチーム、西鉄ライオンズの黄金時代を支えたあの豊田氏の発言だからである。西鉄ライオンズというと豪気の代名詞のようにさえ思っていたが、やはりあれだけの戦跡を残す背後にはストイックな一面があったのだと感慨深かった。  これは決して嫌味ではない。
2004年4月7日
   経営者の理念とは
 このところ「本業回帰」というのがひとつのキーワードになっているようだが、そうしたなかで、キョウデンの橋本浩会長が4月1日付で温泉施設の「大江戸温泉物語」の社長になることが決まった。従来からキョウデンは同社の第2位の株主だから、さして驚くには値しないのかもしれないが「しかし」という気はする。
 キョウデンはプリント基板の製造が本業だが、経営破たんした長崎屋を買収したり、100円ショップを傘下に収めたりと、多角経営が目に付く。一時期にはパソコンのソーテックの筆頭株主にもなっていた。
 パソコンメーカーの買収はまだわかるが、スーパーや温泉施設にどういう相乗効果を求めているのかは、理解できない。基板メーカーが果たして温泉施設経営にどういうノウハウを注入しうるというのだろうか。直接インタビューしたことはないが、もし「儲かればいい」というのがその哲学ならば、それはそれで逆に感心するが・・。
2004年3月30日
   それが私の生きる道
 松下電器産業の今年の中国での新規採用者数は、日本国内の採用者数をついに上回るそうである。無論、ワーカーのことを言うのではない。現地では、明日の松下を支える開発技術者を正社員として採用する。
 ついにこの日が来たか、と思った。これまでは国内で開発、中国で量産という図式だったが、それも崩れてきた。中国の優秀な技術者が開発、それを中国でつくるのが当たり前の時代になる。そのときに日本は何をするのか、という危機感はあるが、その松下のニュースの一方で、国内回帰のニュースもあった。
 「中国生産は国内より4割安いが、日本ではほとんどない不良品が2割も出る。SARSや政治状勢、さらには元の切り上げなどカントリーリスクも大きい」として中国生産を撤退して、国内に生産機能を戻す会社が出てきたのだ。その会社は電子部品をつくるオサダ(八王子)という会社だ。
 天下の松下が中国に軸足を移し、言っては悪いが無名の小さな会社が日本に戻ってくるのは興味深い。後者につい「がんばれ」とつぶやいてしまいたくなるのは仕方ないところだろう。
2004年03月22日
   高橋尚子の笑顔
 高橋尚子がオリンピックマラソン代表から落選した。実力者だけに選考基準などを巡って議論百出だが、スポーツ紙ではないので、それは置く。
 印象深かったのは、彼女の笑顔である。笑顔の下にどれほどの苦渋があったかは想像に余りある。しかしそれを微塵も見せずに会見を笑顔で通したその態度には清々しさを覚えた。
 人は逆境のときにこそ本質が出てしまう。随分前のことだが、某ベンチャー系の会社が倒産した時にその債権者集会にたまたま出席したことがある。社長は業界では名が通った人物で人格者と見られていたが、倒産に至った原因をひとえに無能な社員になすりつけており、ひどく後味が悪かった記憶がある。
 比肩するのも妙な話だが、高橋尚子の笑顔をニュースで見ながら、なぜかその社長のことを思い出した。
 できうれば逆境には遭遇したくないのが本音だが、もしそのときは笑顔で「自分に実力がないのだから仕方ない」と言えるようでありたい。
2004年3月17日
   ウサギ小屋で思うこと
 薄型テレビ市場での増産投資が活発化している。液晶では、シャープが第5・6世代対応を進めているが、昨秋合意していたソニー・韓国サムスンの第7世代工場も予定通り2005年から韓国で立ち上がる。一方PDP(プラズマ)では、世界最大手の富士通日立プラズマディスプレイが宮崎事業所の増設、増産を決めた。
 一般的には、42インチ以上ではPDPが主役になるとみられているが、液晶も大型化対応を進めており、メーカー間だけでなく、こうした製品間での競争も熾烈だ。
 またこうした一方では、プロジェクションテレビも普及が始まっており、関連機器などでセイコーエプソン、凸版印刷、大日本印刷などシェア確保への動きが活発である。
 しかし大型テレビは本当に浸透するのだろうか、とふと思う。庶民のひがみともとられかねないが、42インチの壁掛け式テレビをすんなり置くスペースが一体どれほどの日本の家庭にあるのだろうか。仮に置けても、大型画面でバラエティ番組を見る必然性がよくわからない。映画館の臨場感はわかるが、いつから日本国民はそんなに映画好きの国民になったというのか?
 つまらないギャクを笑い飛ばして休日を過ごすのではなく、映画を見て熱い涙でも流せば自然と景気もよくなるということか・・。
2004年3月11日
   苦笑いする話
 ドイツ証券のM氏が相場見通しを強気に転換した。外国人投資家の買い意欲が旺盛なことなどを受け「日本株式に対する熱い期待は否定できない」としているものだが、どうも素直に聞き入ることができない。 
 当サイトの特集欄「アナリスト予測のまとめ」でも報じているように、M氏は2003年に年末株高を予測(結果的にはこの年初予想が当たった)、しかし年後半にこれを見直して弱気転換していた。
 2004年についてはその弱気継続で、昨年末の時点では、年間の平均株価の高値は1月で1万円、これが11月には8000円にまで下落すると予測していた。早くも高値予測は外れているわけだが、そうした経緯を踏まえて今度は強気に見直されても、苦笑を禁じえない。無論市場は生き物である。前言を翻す勇気も人には必要なことも承知している。しかし・・という気はやはりする。
 余計なことだが、どうもそう感じたのは私だけではないようで、著名なM氏の強気見通しで逆に市場には不安感が漂っているそうだ。このエピソードもまた苦笑を禁じえない。
2004年3月5日
   起業のヒントはそこにある
 東京の山手線では、電車内で駅ごとに何両目がその駅の出口に近いかを案内するディスプレーが表示されるようになっている。記憶に間違いがなければ、あの表示のもともとの発案は主婦だったそうだ。ある日赤ん坊を抱いて出口探して、右往左往した経験がきっかけになっているようだ。
 彼女は今は起業して交通システムを手がける社長になっているそうだ。
 話が事実とすれば、面白い経緯である。普通は「疲れた」と愚痴って終わるところを、ビジネスに結びつけた着想と、おそらくは根気が彼女を起業させたのだろう。
 同じような話はほかにもある。腰痛で悩んでいた人が健康グッズを販売して成功した話もある。
 あなたの今の苦労には普遍性があるか? 少し考えてみると面白いかもしれない。
2004年3月1日
   中国の富裕のギャップ
 福田官房長官が過日「中国のGDPはおそらくは6、7年のうちに日本と同じ規模になる可能性がある」と語った。
 政治家の発言だから、元の切り上げへの思惑も絡んでいるのだろうが、しかし中国の成長率がこのまま持続すると鑑みるとそういう可能性も否定はできないだろう。ただいくら数字の上でそういう可能性があったとしても、感覚的にはやはり温度差を感じる。
 上海あたりでは東京の都心さながらの高級マンションがある一方、車でしばらく行くともうとんでもない田舎となり、廃屋のような家に住んでいる人たちがまだまだいる。現在の中国のGDPは、一部の富裕層がデータを過度に引き上げている側面がある。
 私にはたとえ遠い将来だとしても、中国13億人が総じて日本の1億数千万人より豊かになる時代が来るとは到底思えない。
 100歩譲って、もしそういう時代が来たら、そのときは日本が中国の生産基地になるとでもいうのか? これも考えられない。
2004年2月23日
   ベンチャーの夢、人の愛
 四半期業績の発表、通期業績の修正など相次いでいるが、業績大幅躍進が期待されていたベンチャー企業の不振がこのところ目立つ。
 デジタルビデオ編集機などのカノープス、パチンコ機向けシステムのセタ、プロリング技術のイーディーコントライブ、新規事業参入のフォトニクスなどが最近立て続けに業績下方修正をしているが、その幅の大きさはいずれもかなり際立つ。個別では、当初からその強気予想には疑問符がついていたものもあるし、単純に受注のずれ込みが要因で来期には期待できる会社もあるが、ここではそれは置くにしても(それぞれに当サイトでも報じているのでそちらをご覧ください)、ベンチャー企業の成長の難しさを改めて見せつけられた感もある。
 当の会社の株式ホルダーの不満は想像にあまりあるが、ベンチャーの成長性はそう一朝一夕ではかなわぬという現実も踏まえねばならないということか。使い古された言葉だが、投資の立場から言えばやはりハイリスクハイリターンということだろう。さらに言えば、ここで投げてしまえばそれで終わるが、期待をかけ続けた人の何割かがリターンを得るということも当然ありうる。無論、傷が深くなるリスクもある。要はどこまで愛情を注げるかということなのかもしれない。
 つまりは人間関係と同じか。愛情はまず注いでみよう。
2004年2月16日
   ショックを受ける・・かもしれない
 ソニーショック、ソフトバンクショック、東芝ショックと、マスメディアは被虐的体質なのか、昨年からショックを受けるのが好きなようだが、今度はオリンパスショックなる言葉が過日各社紙面を踊った。
 当サイトでも昨年後半から何回かデジカメの成長鈍化の可能性は指摘してきたが、それでも2003年のデジカメ世界出荷はカメラ映像機器工業会によれば前年比77%増だ。ショックのオリンパスとて、今年度は68%増740万台という出荷予測だ。当初は780万台とみていたのが、40万台下方修正してきたことがショックの由縁なのだが、過剰反応という気もする。通期業績予想の下方修正も不安視されているが、売上高を100億円減額修正しただけで、利益は据置、純利益は52%増という予測のままだ。
 自分が言うのも変だが、とかく新聞は見出しで客を釣りたがる。
 以前にスポーツ紙が、有名選手を「○○死んだ」と見出しで報じて驚いてよく見たら、その後に小さな活字で「つもりになってがんばる」とついていたことがあった。まあこれはご愛嬌だが、オリンパスも「ショック」のあとに「になる不安もあるかな」ぐらいはついてよかった気がする。
 まあ経験的に言えば、それではまず新聞は売れないが・・。
2004年2月9日
   凡人の思うこと
  多くのメディアで報じられているが、中村修二氏に対して、日亜化学工業に200億円の支払いを命じる判決が出たニュースは驚きを持って受け止めた。青色LEDの功績は図り知れないが、額の大きさはやはりサプライズだった。
 ちょうど前日に、やはり光ピックアップを開発した技術者の訴訟に対して、日立に1億6000万円の支払い判決がありこれも驚いたが、その比ではなかった。
 日立のときには「これでようやく技術者にも日が当たる。日本もまともな国になり、技術者の流出にも歯止めがかかるだろう」と素直に思ったが、青色LEDの判決にはまた少し違う感情も禁じえない。
 無論、中村氏の功績は計り知れない。氏への日亜化学が氏に支払った対価は言語道断だが、200億が妥当かどうかは疑問が残る。並列に論じるのは筋違いだが、年商8兆からの日立への1億6000万はともかく、非上場の日亜(前期は1800億円の売り上げとみられる)への200億円は重みが違う。日亜は存亡の問題にもつながりかねず、当然控訴の構えだ。
 見守りたいが、同時に週明けの豊田合成、スタンレー電気、光波、シチズン電子などLED関連銘柄の動きも気になる。
 まあこういう発想をしてしまうところには忸怩たる思いもあるのだが・・。

2004年2月2日
   堰は見えるか?
 シャープの液晶5世代の亀山工場が稼働に入り、松下、東芝などは韓国サムスン電子からのパネル調達をシャープからに切り換えるという観測がある。
 液晶の供給先である薄型テレビでは各社新製品投入が相次いでおりこれが牽引役となっている。また逆に液晶が供給先となっている同品材料関連でも富士写真フイルムが静岡に偏光板材料の新工場建設を決めたほか、凸版印刷、大日本印刷なども増産投資を決めている。川上から川下まで潤う構図となっている。
 ほんの数年前には設備投資というと中国一辺倒だったが、どうもその流れも微妙に変わってきた気がする。国内空洞化への歯止めなどまだまだだが、小さな堰は築かれてきた。小さくとも、堰は堰だ。流れが変わることを願ってやまない。
2004年1月28日
   歴史は繰り返すか
 エッジのストップ高記録が途切れた。日本記録には届かなかったが、別にスポーツ選手の連勝記録ではないのだから、それはどうでもいいことだ。ただ前代未聞の100分割の行方ということを含めて、今後の動向には興味が尽きない。
 20日にはストップ高だったが既に場中で取引が成立するなど前兆があり、翌21日にはストップ高が途切れて大幅安となったわけだが、実はこの構図は(場中取引の翌日にストップ高途切れて反落)、かつて21分割で話題を呼んだインボイスのときと同じである。
 少し振り返ってみると、インボイスは分割の権利取り日となった9月24日に4万5142円(分割価格)をつけ、そこから10月6日の15万9000円まで上げ続け、そこからもみあった。同じ図式で言うと、エッジは12月24日の2220円から1月21日の1万6020円である。インボイスが2週間で3.5倍だったのが、エッジは1カ月で7倍強である。正月をはさんでいるがほぼ倍の規模(?)となる。それが21分割と100分割の違いか、証券会社の誤注文の違いか、会社の実力かはわからぬ。
 ちなみにインボイスは権利行使日の11月19日には7万8500円で高値からほぼ反落した。上昇が倍だったエッジは下落幅も倍か、あるいは半分か、しかと見届けよう。
2004年1月22日
   夢の始まりか、それとも・・
  株式の100分割で話題のエッジがついに14日連続のストップ高となった。日経新聞が「理屈では割り切れない水準」と報じたが、とどまる気配はまだない。
 子株(分割株)が流通するまでの間は売る人がほとんどいないのだから当然だろう。逆に子株還流後はストップ安となるだろうが、どこまで上がり、どこまで下がるかは興味深い。前代未聞の100分割だけに、成功例となれば同じような動きも出てくるだろう。
 エッジのユニークなところは、100分割後も1株売買を維持する点だ。これにより1株25万円だった株価は2500円と購入が可能となった。ここにひとつの錯覚がある。頭記のようにストップ高が続いても、19日終値ではまだ1万6000円だ。2万円弱で株主になれてしまうところに上記の「理屈を超えた」ものを感じさせない魔力が潜む。
 堀江社長は2月にはまた何か仕掛けてくるのかもしれない。100分割という発想もそうだが、常識を超えた何かを感じる。勘違いでないことを望もう。
2004年1月20日
   失恋症候群
 携帯電話市場で一部在庫調整が始まっている。数社の電子部品・ユニットメーカーの関係者が明かしていた。
 「一過性のものだと思う」とはしているが、韓国向けなどで一部製品在庫がダブついているようだ。
 別段あわてることはないのかもしれないが、過去の苦い体験を思い起こしている人も少なくないだろう。携帯電話市場の読み間違いが日本の景気失速をもたらせたのは記憶に新しい。
 しかし、過去の苦い体験がいい意味で教訓となればよいが、必要以上に及び腰になるのは愚かだ。それによって投資意欲が削がれ、結果的に次の需要増に対応できず増産のタイミングを失することになるようだと悪循環だ。
 また妙なことを言うと言われそうだが、失恋で恋愛そのものに臆病になるのは本末転倒だ。次の失恋は致命傷になるというほど前回の傷が深かったのなら仕方ないが・・。
2004年1月14日
   光と影
 ソニーの周辺がこのところ俄かに賑やかだ。7日のタブロイド版夕刊紙では「ソニー社長交代か」と大きな見出しで書かれ、よくある手だが、交代かの「か」の字だけがよく見えないとわからない小ささだったのはご愛嬌か。
 直接のきっかけは米国経済紙が2003年度のワースト経営者に選んだためで、かつてベスト経営者にも選ばれたことがある出井氏としては、心中いかばかりかと察するにあまりある。
 そういえば四半期の業績発表記者会見のときだったかにも、外国人の記者に「これだけ業績が悪くてまだ社長は退任しないのか?」みたいな質問を受けて、出井氏はやや立腹のご様子だった。ほかにも某経済紙が「ソニー復活あるか?」みたいな特集を組んでおり、確かに正念場という気はする。
 思い起こせば、1年前には実はソニーは2003年の注目銘柄であった。それゆえに春先の「ソニーショック」だったのだが、まさに暗転の1年だったか。よくソニーvs松下といわれるが、ちなみに2004年の注目銘柄は多くの諸氏が松下を挙げている。
 「1年後の松下やいかに?」などと底意地の悪いことは言わぬが・・。
2004年1月9日
   来年のことを言うと鬼が笑うが
 明けましておめでとうございます。
 2004年がどのような年になるかはわかりませんが、景気と株式市場には明るい予想も目につきます。いつの世にも悲観的な見方はつきものでしょうが、明るい予想が多いということ自体は悪いことではないでしょう。病は気からという言葉もあります。悲観一色よりは心強い限りです。
 年明け後、日本に先行して始まったアジア株式市場は、台湾が150ポイント増の6041ポイント、香港も225ポイント増の1万2801ポイントと上昇基調で幕を明け、シンガポール、韓国も活況でした。また欧州も好調な立ち上がりとなっています。まずは幸先のよいスタートを切ったというところでしょう。
 1年後にはどのような思いを抱いているか、と想像するのは鬼も笑うでしょうが、1年先の笑顔を信じるところから始めてみたいと考えるのは、単に正月ぼけでしょうか。
2004年1月3日
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